人間、想像しちゃいけないものが、あると思うんです。



  だけど、間違って想像した時は、笑うしかないでしょう。







    転結







ギガ・フロートの屋外にて、とロウはコーヒーを飲みつつまったりとした時間を過ごしていた。
その穏やかさに、今が戦争中であることを忘れてそうになる。

ふと、は何か思いついたらしく、口を開いた。




「叢雲さんて、いつもサングラスかけてるよね?」




「ああ。それがどうかしたのか?」









「いや、ちょっと考えたの。もしも叢雲さんが鼻眼鏡をかけてたらどうなるかなって・・・」











劾が鼻眼鏡をかけたら・・・?








に言われて、ロウは想像する。










・・・・・・・・。










「ありえねぇだろ!!」






案の定、ロウは腹を抱えて爆笑した。

「やっぱりそう思うよねー」


問題を提起したも爆笑している。
の目から見た叢雲劾は、とにかく面白味にかける人物だ。そこで、面白半分に微妙なスパイスを投入してみたのだが、案の定、分けの分からない事になってしまった。





「鼻眼鏡じゃなくても、仮面舞踏会とかに使うような仮面でも面白いかも!!」


「子供向けの変な形のでも似合うんじゃねぇか!?」


「いっその事、雑誌の付録についてるような3Dの眼鏡にしたら!?」


「パーティーグッズにあるようなやつでもよくね!!」


「なにそれ!!」


「うわっアホくせー!!」





自分たちで案を出しておきながら、爆笑するバカジャンク屋二人。・・・一流の傭兵、叢雲劾相手にアホな事を想像できるのは、世界中探しても、この二人くらいだろう。




「明日絶対にさ、腹筋筋肉痛になってるよ」

笑いすぎで。
涙目+酸欠になりながら、が云う。

「今の状態で劾に会ったら、オレ、絶対に劾の事直視できねぇよ」

腹イテー。
ロウも同様、笑いすぎで酸欠になっている。



「劾に会ったら速攻逃げるか」
「そだね」
二人は立ち上がり、室内へ入っていった。





  * * *





二人は外で考えた事を忘れ、雑談しつつ通路を歩いていると、目の前から、風花とイライジャがやってきた。

、ロウ、久しぶり!」
「元気だったか?」
風花とイライジャが、とロウを見つけて嬉しそうに走ってくる。
「久しぶりだな、風花」
「うん」
ロウは風花の頭をガシガシと撫でてやる。
達の方は、何か変わった事無かったか?」
「いや、特に無いけど・・・何かあったの?」
「たいした事じゃないんだけど・・・」
何も無かったのだが、と話をしていたいがために、ちょっと嘘をついたイライジャだった。
だが、ちょっと考えてみよう。風花とイライジャがいると言う事は・・・





(劾が)



(いるって事?)





思考がシンクロし、とロウは思わず顔を見合わせた。
すると、ちみっ子ユニット(風花とイライジャ、未成年の事。命名:)から遅れて、大人組(劾、ロレッタ、リード。命名:)がやってきた。
劾の姿を確認したジャンク屋二人の動きが、止まった。

は口と腹を手で抑えて俯き、ロウもと同じく手で口を抑え劾に背を向けて、に寄りかかった。しかも、二人はフルフルと震えている。



「二人とも、どうかしたの?」

二人の異変に気づいたロレッタが声をかけるが、何でもない、と首を横に振るだけだった。



(マジでヤベェよ・・・!)


(が、我慢しなきゃ・・・!)






ここで声を出してはいけない。



劾を見てはいけない。









そうしたら最後、爆笑するに決まっている。









それだけは避けねばならないのだ。



「ねえ、本当にどうしたの?」
心配そうに風花がの服を引っ張る。
「な、何でもないから・・・(た、耐えなきゃ・・・!)
「心配、すんなって・・・(逃げてぇ・・・!)
そんな二人の心情など知らず、劾が二人に近づく。









「おい」









ポンとロウの肩に手をかけられ、とロウは思わず劾を見てしまった。

瞬間、二人の思考は銀河の彼方へ飛び去りかけてしまった。





「さ・・・」





「さ?」

震えながらが発する言葉を、イライジャが反復する。









「三十六計逃げるが勝ちっ!!」





「おうっ!!」







その声と共に、とロウは物凄いスピードで走り去ってしまった。
後に残されたのは、何があったのか理解できず、ただ、佇んでいるサーペントテール一行だけだった。



どうにか逃げられた二人は、誰もいない場所で、腹を抱えて思い切り笑った。
お互い、明日は絶対に筋肉痛になってる、と言いながら。




それからしばらくの間、とロウは劾に遭遇すると物凄い勢いで逃げて、誰もいない場所で爆笑する日々が続いた・・・らしい。




   END




後書き
 劾ファンの方すみません
 自分でもなんでこんなネタが思いついたのか、分かりません。
 一つ云える事は、さんもロウも、かなりアホな事を考えた事です。
 本当にね、最強の傭兵である劾に対して、こんなネタを書くのは、私くらいだと思います。
 こんなネタもさんとロウのコンビも、書いてて楽しかったです。