もしもFASTRAY第2話にがいたら・・・。








    
は盲目





傭兵としての仕事――依頼を受けたサーペントテールは、その任務を遂行していた。
けれど、現れた
悪趣味なゴールドのグフイグナイッテドによって、事態は分けの分からない方向に向かっていった。
そのゴールデングフに喧嘩を売られてしまったのは、『英雄殺し』のイライジャ・キールであり、喧嘩を売ってきたのが、自称『英雄』のルドルフ・ヴィトゲンシュタイン。

ルドルフのセリフに、その場にいた人間たちは全員
ドン引き


正直、
痛々しくて見ていられない。一方的に喧嘩を吹っかけられたイライジャに同情の視線を送った。



一方のイライジャは、この勘違い人間をどうしようかと思案する。


ぶっちゃけ
闘いたくない。闘えば同類にみなされそうだ。




「さあ、『英雄殺し』よ、美しく僕に殺され――・・・」



ルドルフの言葉が言い終わらないうちに。








「黙れ、この勘違い野郎っっっ!!!」






の声と共に。









ドゴォッッ・・・!!










物凄い音がした。
突然乱入してきたMSが、ゴールデングフのヘッドを
殴り倒したのだ。
この出来事に、その場にいた人々(MS)―――乱入してきたの105ダガー以外は、驚きのあまり全員行動を停止した。









「・・・・・・・・・?」






この出来事に一番驚いたのは、イライジャ本人だった。

スピーカーから発せられた声との機体は、本来ならばこの場にいないはずの恋人――ジャンク屋として飛び回っている、が現れたのだから。
イライジャはもちろん、他の人々(MS)は、事の成り行きを見守った。
いくらMSの扱いに慣れたでも、隙を突いて倒されるかもしれない。そう心配したイライジャはそっと、ビームライフルに手をかけ、万が一に備えた。




「き、君はいきなり現れて何をするんだ!!僕のグフに疵がついたら、どうしてくれる!?」


そのセリフもまた、の癇に障ったようだ。



105ダガーはゴールデングフの腰を思い切り踏みつけた。


「なっ・・・!?」


「戦闘なんてやっていれば疵がつくのは当たり前だ!疵をつけなくなかったら、
ショーケースにでも入れて飾っておきな!!!

のいう事は
至極正論である。




「悪いけど、私は恋人が貶されて黙っていられるほど
温厚な人間じゃなんでね・・・!!



彼女の『恋人』発言を聞いたイライジャは、
乙女のように頬を紅く染めてその言葉の意味をかみ締めた。
とは恋人なのに、恋人ららしいことをしていない。その度に、本当に自分たちは恋人なのだろうか、と何度も悩んでいた。


けれど、の発言によって、イライジャがそれが杞憂である事がわかったのだ。







「その分かりやすい三文小説から引用してきた台詞は何!?オリジナリティってもんがないの!?





その間にも、105ダガーは物凄い台詞を言いながら、
ゲシゲシとゴールデングフを踏みつけている。


下手に手を出したら、
逆に殺られそうな雰囲気だ。





「イライジャはアンタと違って、自分で努力して今の地位を確立したのよ!!アンタのような勘違い野郎がイライジャに敵おうなんて100光年早い!!!シュールストレミングの汁で顔を洗って出直してこいっっ!!!




―――内容はアレだが、その
ある意味漢らしい言葉に、恋人であるイライジャはもとより、その場にいたほとんどの人間(サーペントテールを除く)がときめいた。


既に
あの世に行きかけているルドルフに、の言葉は全く通じていないのだが。






それから、どのくらい時間が経ったのだろう。



流石に心配になってきたため、イライジャが彼女に声をかけた。


「・・・、それくらいにしたらどうだ?」


イライジャに言われて、はゴールデングフを踏みつけるのを止めた。

「まだやりたいないけど・・・イライジャが言うなら止めるわ」
言われて、イライジャは安堵の息を漏らす。
に人殺しをして欲しくなかったのが本音だ。

「それにしても、何でここに?」

「ああ、それはね・・・」

事の次第をは簡単に説明した。
が現れた理由は、事前にこの圏内で戦闘をすることを聞いていたため、チラッと顔を見に来たという、至極簡単なものだった。
戦闘を見守っていたところ、悪趣味なゴールドのグフが現れ、そのパイロットが自分の恋人を罵り、癇に障るセリフや態度に耐え切れなくなってが現れたのだ。
「だからって、無謀すぎないか?」

「・・・ちょっとやりすぎたとは思ってるけど・・・」






ちょっとなのか?






そんな周囲の心情など知らず、二人は続ける。


「イライジャがあそこまで言われて、黙っていられるほど私は温厚じゃないし・・・」


「気持ちは嬉しいけど、に何かあったら、オレが黙ってなかったんだぞ」


「むぅ・・・」


ちょっとは上目づかいでむくれて見せる。
そんな彼女に仕草に、
可愛いな〜、などと思ってしまったイライジャがいた。

「仕事、まだ時間掛かる?」

「んー・・・状況次第かな?」

「そっか・・・」

「どうかしたのか?」

「いやね・・・美味しいクッキーが手に入ったから、その・・・時間が、出来たら一緒に食べたいなって・・・あ、無理なら別に・・・いいけど・・・」

「まさか・・・・折角カズキが誘ってくれたんだし、その・・・仕事が終わったら・・・連絡、入れるよ・・・」

「ん・・・待ってる・・・」


お互い
真っ赤になりながら、モニター越しに会話をするイライジャと

会話とお互いの表情だけ見れば、
初々しいカップルといったところで、とてもほのぼのとしている。


だが、第三者から見た光景は―――
異様としか言いようがなかった。







密林の中、105ダガーの足元にはゴールデングフがピクリとも動かず転がっており、2体のMSのバックは
ピンク色の花が咲き乱れ、その周辺にはピンク色のほんわかしたオーラが漂っている。そのオーラに当てられたMSとパイロットは石化してしまった。


正直、
戦場にある空気ではない。



そんなことはんどおかまいなしに、
2機――二人は、半ばバカップルと化していた。






なお、このときの出来事はアジア圏内の歴史に、
『戦場に現れたバカップル』として、深く刻まれる事となった。






    END







後書き
 「もしもさんが現れてゴールデングフを倒したら・・・」という、勝手な空想が形になりました。
 書いてて個人的に楽しかったです。
 さんは微妙にツンデレということで。