夢でしか逢ったの事のない人に、

恋焦がれ、想いを寄せる。

知らないはずなのに、どうしようもなく、恋しくて、たまらない――・・・




黒に



夢を見た。

漆黒の空間に輝く、紅と蒼。

熱き魂が具形化させたような、紅のMS。

静けさの化身の如し、蒼のMS。

正反対のMSが宇宙を駆け抜ける―――


―――蒼?

「どうかしたんですか」
リーアムの声に、ロウが目を覚ました。
どうやら、作業中に眠ってしまったらしく、作業場には修理途中のメカがあった。
「いや・・・ちっとばかし、夢見ただけだ」
「夢ですか?」
「ああ」
ロウは軽くストレッチをし、再び作業へ戻った。
一瞬、彼の瞼に美しい蒼のMSが映った。


―――紅?

「どうかしたのか?」
イライジャの声に、劾がハッとした。
仕事が終わった直後だったため、珍しくブリッジで転寝をしていたようだ。
「いや・・・何でもない」
「そうか。それならいいけど」
イライジャの言葉を半分聞き流すように、劾は窓の外を見つめた。
彼の眼前に広がるは、漆黒に所々輝くものがある宇宙。
一瞬、その空間に炎のような紅のMSが映った。





次に見た夢は、紅と蒼のMSが対峙する夢だった。
MSに乗っているのは、見たことのない人物だった。





ロウが見たのは、傭兵の青年だった。
彼は言った。

『お前が生き残るには、俺を相手にしないことだ』



劾が見たのは、ジャンク屋の少年だった。
彼は言った。

『俺も俺の仕事をしたいんでね』


逢った事もないのに、はっきりとその声が分かる。
けれど、顔が見えない。


仲間に言ったら、それは「夢だ」と笑われた。





それは『夢』と簡単に呼べるようなシロモノに思えない。
あまりにリアルなもの。


そして。


旧友から依頼を受けたプロフェッサーはその内容をロウ達に知らさず、


オーブのとある人物から、ASTRAYの完全消去の依頼を受けたサーペントテールは




ヘリオポリスに向かった。


『先手必勝ォ!!』



『なかなか良い作戦だったな』



夢は正夢となり、二人を引き合わせる引き金となった。

漆黒の空間に輝く、赤と蒼のMS。

ASTRAYと言う名の運命に翻弄されるジャンク屋と傭兵。

そして、それを作った技術者。

同じタイプのMSでありながら、まったく反対の操縦者を乗せて、今、彼らは飛び立つ。

果てしない宇宙に、それぞれの想いと共に―――。



END


  後書き
ときた先生のASTRAYの『黄昏の魔弾』を読んで思いついたものです。
めずらしくカップリング要素が少ない。でも、心は劾×ロウだ!!
どーやら私は『夢』ネタが好きみたいです。
私自身、よく正夢を見るので・・・。
レッドフレームを『紅』と表現したのは、『機動戦士ガンダムSEEDモデルVel.4』で
レッドが『紅の炎』と表現されているからです。
実はASTRAYのプラモが出ているから買いました。