After a Party.




 とあるプラントに設けられている出島に傭兵部隊サーペントテールが立ち寄った時、 その出島の一角から人の話し声が聞こえてきた。話し声、というよりは、騒いでいるような声だ。

 さほど興味を示さず、そのまま立ち去ろうとした時、


「劾!」


 見知ったジャンク屋・ロウが手を振ってきた。


「・・・何をしているんだ?」
「クリスマスらしいかなら、 ここら辺にいたジャンク屋組合の連中が全部集まってちょっとしたパーティーをやっているんだ」
  見れば、1メートルも無いツリーに簡単な飾り付けが施され、 ジャンク屋組合員達が持ち寄ったちょっとした飲食物があり、特に酒瓶が無造作に転がっている。

「ロウー、そいつら何だー?」

 赤い顔をした老人がロウの名を呼んだ。

「こいつらはサーペントテールっていう傭兵部隊の連中だ」

 途端、傭兵だー、という声が上がる。
 呂律が回っていなかったり、他人にからんでいたり・・・と、どうやら、彼らはかなり酔っているらしい。



「よろしければ皆さんもいかがですか?」
  いつもより笑顔が3割り増しになっているリーアムが提案する。

「良いのか・・・?」

「ええ」

  リーアムの言葉に、イライジャは引きつった笑顔になってしまった。


  彼らの背後では地獄絵図とでもいうような、修羅場が展開されていたからだ。
  ジャンク屋組合の人間はしょっちゅう宇宙や地球を行き来しており、あまり娯楽らしい娯楽が無い。 故に、仕事の合間などの酒飲みが娯楽なのだ。
  おまけに、お祭り好きな者が多く、顔見知りの人間がいれば彼らを巻き込んで 何かにつけては飲み会を行ったりする。


「兄ちゃんたちも遠慮するな」


「おら、こっちこい!!」


  他の組合員達からも誘われ、成行きで参加することとなった。




  * * *




 まどろみからロウが意識を戻した時、温もりを感じた。誰かに寄りかかっているらしい。

  その温もりから離れたくないと思い、もっと身を寄せようとした。

「起きたのか?」

 呆れたような声が頭上から聞こえてきた。



  そこでロウは自分が劾に寄りかかっている事に気がついたのだ。


「劾・・・?」

  彼は覚醒しておらず、しきりに目を擦っている。
  周囲を見渡すと、自分と劾以外は眠っている。
「なあ、何で俺がお前に寄りかかっているんだ?」
  ロウのその言葉に、劾は軽くロウの頭を叩いた。


「酔ったお前が俺にくっついて離れなかったんだ」

「・・・!?」

  劾の言葉にロウは顔を紅く染める。

  いくら酔っていたとは言えど、劾に抱きついて離れなかったとは・・・。


「劾、今すぐ忘れてくれ」


「無理だ」


 即答かよ!


  身から出たサビであるが、ロウは劾を睨みつけた。

「俺は嬉しかったぞ。お前がいつもよりかなり積極的だったからな」

 ロウは何か言いかけた口を閉じる。
 そう、ロウはかなり恥ずかしがりやで、自分から劾に抱きつく事は少ない。 彼はそういった事情に疎かった上に、環境が環境だったため、スキンシップに慣れていないのだ。

「馬鹿・・・」

「馬鹿で結構だ」


 劾はロウを抱きしめた。


 滅多に逢わない為、恋人らしい時間はほとんど取れない。取れたとしてもほんの僅かな時間だ。


「ロウ」


「・・・!」


  劾がロウに口付けると、一瞬、ロウは身体を強張らせた。


 深く、全てを貪るようにロウを求める。口だけでは足らず、頬、額、首筋に、口付けを落とした。


 その時間はまるで永遠。



「好きだ」



 そんなの知ってる。



 ロウは口に出さず、自ら劾に口付けた。





  パーティーが終わっても、二人の時間はまだ続いた。







END


うちのロウは酒を飲むと劾に甘えます。