Ignorance Amd Innocent.


「あーはっはっはっは・・・!!」

建設中のギガ・フロート一角から、物凄い笑い声が響いた。
その笑い声の人物は、ジャンク屋組合のカズキであり、彼女の目の前にいるのは、同じくジャンク屋組合のロウである。
カズキは先刻、ロウから聞かされた言葉に対して、笑っているのだ。
「笑いほどの事じゃねえだろ!?」
「だ・・・て・・・る・・・なんて・・・」
必死に笑いをこらえようとカズキは試みているのだが、どうにもならない。それどころか、涙目になり腹を抱えている当たり、もっと酷くなっていく気がする。
「あ・・・ありないし・・・!!」
そもそも、二人は最初、普通に話していただけだった。それが、カズキの知り合いの傭兵の女性が結婚した、という話しになり、それがどんどん発展して言った結果、冒頭に至るわけだが。
既にカズキの腹筋は、痛み始めている。
笑い死ぬ、とはこの言葉だろうか?
痛み+笑いをこらえつつ、カズキはロウを見た。
「今時そんなの信じてる人間はいないよ?」
「違うのか?」
「そんな事があるわけないでしょうに」
ムー、と口を尖らせるロウのすがたを見て、カズキは何処でどう間違ったのかな?などと、のんきに考えていると、見知った方々を発見した。
サーペントテールの劾とロレッタである。
「お二人さん、何してるんですか?」
「ちょっと休憩中なんだけど・・・何かあったの?」
お互い事務的な事しかはなさない劾と違い、ロレッタとカズキは良く話をするため、それなりに仲が良い。
「こいつがオレの考えは違うって云うんだ!」
そんなほのぼのとした女性二人はほうっておいて、ロウは劾に異議を申し立てた。
「どんな考えなんだ?」
劾とロウは身長差があるため、必然的にロウが劾を見上げる形になる。襲いたくなる衝動(ちょっと待て!!byカズキ)を劾は必死に抑えて、大人らしく対応した。
「子どもがどうやってできるのかだ!」
「それで、お前は何と答えた?」

「コウノトリが運んでくる!」

自信満々にロウは胸を張る。
その言葉に、カズキは再び笑い、ロレッタは苦笑し、劾は表情こそ崩していないものの、内心物凄い事になっていた。
「ありえないですよね?」
涙目になりながらカズキが同意を求めてくる。
「ずいぶん、個性的な考えね・・・」
「そうだな・・・」
ロウはこの手の事に疎い事は、何となく分かっていた二人だが、まさか、これほど疎いとは思ってもみなかった。
まあ、劾からしてみれば、それはそれで可愛いのだが。

「あ、じゃあさ・・・叢雲さんに教えてもらえば?」

爆 弾 投 下。

カズキの爆弾発言に、ロウは納得したようにいった。

「お、いい考えだな!」

(え、いいの?)
内心珍しく焦っているロレッタと対照的に、劾はとても落ち着いている。

「―――そうだな。なら、オレの部屋に行くとするか」
「おう」
ロウは肩に手を回され、嬉しそうに頷き、去っていった。


後に残されたのは、カズキとロレッタだけだ。

「いいの?」
「何がですか?」
「ロウの事よ。あの子、大丈夫なのかしら?」
ロレッタの問いに、カズキは笑顔で表情で答える。
「いくら叢雲さんでも、ロウ相手に実践するわけ無いですよ」
あははー。カズキはのんきに笑っている。
しかし、劾との付き合いが長いロレッタは、劾がロウに実践するという確信があった。
青いASTRAYを手に入れてから―――ロウと出逢ってから、劾の中の何かが変わった。今まで興味の無かった恋愛に興味を示し始め、仕事以外はロウの事ばかりかんがえているのだ。ヘタすれば、仕事中も考えているかもしれなくて、ある意味怖い。
「ロレッタさん、どうかしたんですか?」
ロレッタの様子がおかしいことに気づいたカズキが、彼女に声をかける。ロレッタは、首を横に振るだけだった。

何事もなければよいけど。

誰に言う事無く、ロレッタは呟いた。


ロウがどうなったのかは、神のみぞ知る。


 END




後書き
 ありえないネタだけど、お子ちゃまなロウは書いてて楽しかったです。
 個人的に、ロウはこういうことに凄く疎いイメージがあります(リーアムがそう云ったものから遠ざけていたっぽい)。
 
  ロレッタ→風花がいるから経験も知識もある
  カズキ→経験は無いけど知識はある
  劾→経験も知識も豊富
  ロウ→経験も知識も皆無

 個人的にこんなイメージがあります。