恋だの愛だの云っている暇は無い。

  だけど、

  やっぱり云いたくなるものなんです。




    恋愛至上主義





ー・・・て、寝てるのか」

七海光太郎がDDSの当直室を訪れた時、ソファーでが眠っていた。
書類か何製作していたのだろう。テーブルには分厚い本と(七海からすれば)意味不明な文章が書かれた紙とおかれている。
近づいてみるが、は起きない。
そっとの寝ているソファーに七海は腰掛け、無造作に散らばっている髪をすいた。サラサラと音を立てて、指の隙間からぬけていく。
好戦的な光を浮かべた瞳は今は閉じられ、あどけない、子どものような寝顔。

(疲れてんだろうな)

DDSの講師であり、DDCの探偵であるは、やたらと人の気配に敏感だ。
不用意に眠っている彼女に近づけば、とりあえず殴られるのオチである。七海はに殴られた経験が、DDS第一期生の中で一番多い。
それでも眠っているに近づくのは、彼女の寝顔が見たいからである。
こうしていても起きないのは、よほど疲れているのか、或いは――・・・。


(オレに心を許してくれてるって)


自惚れても―――期待しても、でもいいのだろうか。

七海がに覆いかぶさり、そして。




「何人の寝込みを襲ってるの?」



呆れた口調で、眠っていたはずのが言った。
「何だ、起きたのか?」
「アンタが部屋に入ってきた時から、気配に気づいてたんだけどね」
「流石は。人の気配には敏感だな」
「一応ね・・・あのさ」
「ん?」
「退いてくれない?」
七海は未だにに覆いかぶさったままである。
「眠り姫は王子様のキスで起きるってのが、相場だろう?」
「私は姫って柄じゃないよ」
「オレからすれば、は可愛い『お姫様』だぜ」
「よく言うよ」
苦笑しつつも、穏やかな表情でが言う。七海はその表情が好きだ。無論、彼女自身も。



「なに――・・・」




気がつくと、七海はに口付けていた。




「・・・不意打ち」



一瞬触れ合っただけだが、は小さく呟いた。


「悪いか?」
「監視カメラから見られてない?」
「平気だって」
「七海の平気は当てにならないでしょう」
「オレってそんなに信用ない?」
「うん」
が起き上がる動作をしたため、七海が身を引く。
寝起きで髪の毛がばらついているが、は無造作に手櫛で紙を整えていると、七海が後ろからを抱きすくめた。
一瞬、は七海の行動に身体を強張らせたが、彼が落ち着かせるように優しく頭を撫でると、徐々に力が抜けていく。最後には完全に七海にもたれかかるようになった。

そして、は思う。


「やっぱり、私さ」
「ん?」



「七海の事好きだなーって思うよ」



「オレもの事好きだな」



事も無げに言うに対抗して、七海もまた、ストレートに己の感情を口にする。
しばし沈黙の後、声を出して笑ってしまった。



子どもじみた、バカらしい台詞だと我ながら思う。



だけど。




「やっぱり好きだって思う」




END


  おまけ
「あの二人、何やってるのかしら?」(紫乃)
「いつもの事だ、気にするな」(本郷)
「いつもなんすか・・・」(キンタ)
「七海先生と先生って、恋人だったんですね!」(メグ)
「てっきり、七海先生の片想いかと思いましたけど」(カズマ)
「いや、先生の行動を見ていれば、察しがつくよ」(リュウ)
「へ〜、そうなんだ」(キュウ)
「でも、イマイチ分かりづらいですね」(カズマ)
「昔からよ、あの二人は」(紫乃)

しっかり見られてましたw



 後書き
とても七海が偽者に見えます。
七海はさんが大好き。さんは七海が大好き。
もうDDS(DDC)公認の仲ですが、本人らは一応隠しています。ですが、何か外れると、見ていて困るバカップルになります。
うん、かいててたのしかったです。本文よりもおまけが。