Christmas Story. 12月25日、県立遠誠高校の終業式が行われた。 式自体は午前中で終わったのだが、普段図書室に集まる面子は簡単な昼食をとった後、図書室に集まり、大掃除を行った。 大掃除が終わると、カウンターに一番近い席に香澄達は集まってきた。 「今日はクリスマスですね〜」 と和奈は言った。 12月25日は遠誠高校の終業式であるが、世間一般には『クリスマス』という行事の方が色濃い。 「クリスマスか・・・」 香澄は眉間にしわを寄せた。 「先輩は、クリスマスが嫌いなんですか?」 羅威の言葉に香澄は苦笑しつつ、彼の頭をなでる。 「クリスマス自体は嫌いじゃないよ。俺が嫌いなのは、イエス・キリスト」 世界三大宗教の一つ、キリスト教の、世界を救うとされる『救世主』。 そういえば、業は昔の事を思い出した。 昔といっても、数年前のことだ。まだ中学生だった頃、通っていた中学校の正門の前で聖書がくばられていた。大抵の生徒は「いらない」という意思表示をしているにも拘らず、何故か強引に渡されていた。 もちろん、香澄ものそのうちの一人だ。 『宗教の自由って言葉知ってますか?』 と言った。それでもしつこく言ってくるので、 『黙れ切支丹』 物凄く低い声で言った。 低くドスのきいた声と鬼神の如し表情によって、その場の気温が氷点下まで下がった事は、未だに中学校の伝説として語られている。 それはともかく 。 「小さい頃はサンタクロースを信じてたな」 白夜がいうと、口々に信じていた、という言葉が出てきた。 「サンタクロースって本当にいるんでしょうか?」 天梨の言葉に、香澄はは真剣な顔で答えた。 「いるよ」 その言葉に香澄と業と雪穂以外は、信じられない、という表情だった。 しかし、香澄のその表情は余りにも真剣だったため、嘘だ、とは言えなかった。 「マジ?」 「うん。サンタクロースの起源は、4世紀の今のトルコに実在した、ニコラスっていう司教なんだ」 「キリスト教関係ですね」 「ああ。そのニコラスという司教は、クリスマスの日に貧しい人の家を回ってプレゼントを置いて言ったって。その功績が認められ、聖人として扱われるようになった。聖ニコラスを外国語で書くと『Sinterklass』となる」 香澄はカバンから手帳を取り出し、使っていないページに『Sinterklass』と書き込んだ。 「あ、確かに」 「英語読みにすると、サンタクロースになるな」 「それに加えて、北欧にはクリスマスの日になると願いを叶えてくれる妖精がいる。妖精と聖ニコラス、この二つが合わさって、今のサンタクロースになったんだ」 香澄の言葉に、一同は感心したように、ため息を漏らした。 「皆も何かしらクリスマスにまつわる話を知ってると思うんだけど」 どうかな?という言葉に、各自が知っているクリスマスの話を繋ぐ。 それは、ポピュラーなものからマイナーなものまで、クリスマスのシンボルや物語などを語り合った。 「知っているようで知らないクリスマスの話をするのも、楽しいな」 人の数だ人格があるように、人の数だけ物語がある。 |
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