意外な共通点。 「香澄先輩と九龍先輩って、意外な共通点があるんですよ」 放課後の図書室で、如月紅が突然そんな言葉を口にした。 「いきなりだね、如月さん」 「そうですか?」 紅の言葉に神埼業が反応を示す。 「で、どんな共通点なんだ?」 興味があるのか、それまでおとなしく読書をしていた姫神浬と龍法寺和奈が紅のそばによって来た。 「興味あるんですか?」 「そりゃあるに決まってるよ」 なあ、と同意を求めれば、肯定の反応が返ってくる。 「でも、香澄と九龍の共通点て・・・思いつかないな」 「そうかもしれませんね」 そんな事を言う浬に、須賀天梨が苦笑しつつも、紅に問いかける。 「それで、どんな共通点なの?」 「ずばり、身のこなしが綺麗なところ!」 『・・・・・・え?』 異口同音で疑問的な返事。 「『え』って何で疑問系で聞くの?」 「だって・・・」 「ねえ・・・」 思わず天梨と和奈が顔を見合わせる。 天野香澄と九龍レイ。紅の気づいた共通点が『身のこなし』といわれて、何となく納得できない。 「あー、信じてませんね!!」 信じられるかっつーの。 浬はそんな言葉を内心呟いた。 確かに二人の運動神経は抜群だ。香澄は剣術、レイは武術に関してはぬきんでている。 だが、香澄もレイも大雑把で、『身のこなしが綺麗』とは思えない――紅以外の面子の意見である。 「つかさ、何を基準に言ってんの?」 呆れた口調の樹白夜に、紅が食って掛かる。 「見る人が見れば分かりますよ!背筋は常に伸びているし、足捌きや歩き方に隙がありません!」 言われて、業は、ああ、と頷いた。彼は何となく納得したようだ。 業から見た香澄とレイは、確かに背筋は常に伸びていて、猫背になった所を見た事がない。 「先輩たちの身のこなしは、もう身体が覚えているんだと思います。だから、意識しなくても出来るんですよ」 香澄とレイ。大雑把に見えるがその実、訓練と礼儀が叩き込まれており、意識しなくとも動けるのだ。 また、隙があるように見えるがその反対で、少しでも殺気をちらつかせれば、直ぐに反応出来る――まるで武人のようだ、と紅は嬉しそうに語る。 実際、紅は嬉しいのだ。その事に気づいたのが、この面子の中で自分だけであり、ちょっとした優越感があった。 「見ていてとってもためになりますよ」 紅も武術を学んでいるが、『無意識』の行動は、二人には到底及ばない。 れでも、彼女からすれば二人は『目標』なのだ――いずれ、自分も無意識のうちにそんな風に行動できれば良いな、と、思っていた。 「結構見てみれば、意外な共通点があるんです」 ただ、それに気づくかはその人次第という事だ。 END |
後書き
香澄とレイの意外な共通点でした。