I'll stay to wait for you 過ぎ去っても……


多分、偶然だった。
その歌を聞いたのは。



  逢いにこう




その日、本郷は珍しくバスに乗っていた。
午前中という時間帯だったため、
バスには初老の女性と、小難しい参考書を呼んでいる大学生と音楽を聴いている大学生、うとうとしている主婦。
車内は珍しいほど穏やかな静寂で、まるで時間が止まったかのようだった。
ふと、耳をすませると、本郷の耳に歌が届いた。
前の席に座った学生のつけていたヘッドフォンから微かに―――改造人間である本郷の耳には十分に届く旋律。



I'll stay to wait for you 過ぎ去っても……

桜色した春風が 私の側をただ吹き抜ける
繰り返してた季節の中に あなただけがいなかった




学生は音程を覚えようとしているのか、音楽にあわせ軽く足踏みをする。

―――何故だろう、無償に彼に逢いたくなるのは。

本郷は目を閉じた。
昔、共に戦った戦友。
子供のように明るく、コロコロと表情が変わる。
真っ直ぐに、ひたすら真っ直ぐな瞳で。


I'll stay to wait for you 過ぎ去っても
いっしょにいたよね?
消えかけてゆく温もりを 消せない痛みで引き止めたい



「滝・・・」

逢いたいよ、お前に。

ゆっくりと、おそらく自分以外の何者にも聞こえることのない、微かな声が、静寂の空間に、嫌に響いた。

逢いたい。
逢って抱きしめたい。
抱きしめて、キスをして、自分の事しか考えられなくしたい。

愛しいのだ、どうしようもなく。
遠い大地で戦う戦友。


本郷は料金表の横についているデジタル時計を見た。
今から帰って、急いで飛行機に乗れば、滝のいるNYにつく。
パスポートの期限は切れていないし、飛行機のチケット代くらいある。


逢いに行こう。
大切な人に。


END


自分で書いといてなんですが、分け分かりません。
ホント、寝る直前まで書いていて、朝起きて改めて見ると、かなりエライ事になってました。
ちなみに、この話に出てきた歌は、某ギャルゲーの歌です。
聴いた瞬間、ゴーンと何か衝撃を受けました。