「やぁ・・・」
昼下がりのリビングから、微かに聞こえる喘ぎ声。
その声が誰なのか、リビングへ入るための扉の前にいる面々一発で分かり、そして固まるしかなかった。




  下がりの情。




話は、買い物から帰ってきた筑波と沖が帰ってきたことから始まる。
「あ、滝さんのバイクだ」
「って事はいるのか?」
玄関前に止まっている滝のバイク――漆黒の、ホンダワルキューレ。
本郷と一文字の親友であり、FBIの捜査官である滝は、時折日本にやってくる。
大抵は連絡を入れてくれるのだが、たまに突然やってくる事もある。
今日は後者らしい。
二人は顔を見合わせ、滝がいるであろうリビングへを足を進めた、が。

「「・・・」」

リビングへ入るための扉の前で、固まってしまった。
その後、城・神・風見・結城・アマゾン・村雨と帰宅した。
彼らもまた、筑波と沖のように扉の前で固まった(アマゾンと村雨は何も分かっていない)。



そして、話は冒頭へと戻る。



(た、滝さんてば、何やってんスか!?)
(俺が知るか!)
(昼間からやらないでくださいよ・・・)
(普通リビングでしないでしょ!?)
(た、滝さんが・・・)
(入らないんですか?)
(入れるか、この馬鹿!!)
(が、ガウ・・・?)

扉の前で固まり、ヒソヒソと内緒話。


「これくらいでへばるなって。そんなんじゃ、俺が楽しめないだろ?」
「そうだぞ、滝」
「だからって・・・ぅあ・・・」



((((((本郷先輩(さん)だけじゃなくて、一文字先輩(さん)いるんですか!?))))))



筑波と沖と結城は顔を真っ赤にして慌て、城と神は顔面蒼白、 風見はこめかみに抑え、アマゾンと村雨は頭に疑問符を浮かべている。

「い・・・た・・・!」
「もうちょっと我慢しろって」
「すぐに良くなるぞ」



((((((3Pですか!?))))))



扉に一番近い筑波と沖がどうにかして様子を見ようとしているが、生憎曇りガラスとなっているため、
様子をうかがうことが出来ない。

「こっちはどうだ」
「ずいぶん良くなったようだな」
「あ・・・ほか・・・!!」


(どどどどどうしよう!?)
(滝さんの危機だ!俺たちで乗り込もう!!)
(下手すれば俺達が殺されますよ!!??)
(いや、この場合は仕方がないだろう・・・)
(アマゾン、村雨、用意しろ!!)
(何の用意ですか?)
(ミンナ、怖い・・・)
(覚悟を決めろ!!)


全員でアイコンタクトをし、リビングに入る用意をした。
先輩二人に殺されようが、滝の方が大事だと思ったからだ。


『滝さん!!!』


ガラスが壊れるくらい思い切りリビングの扉を開け、なだれ込んだ8人。
彼らの眼に映ったもの、それは。
フローリングに寝そべっている滝。
滝の上に乗り腰に指圧をしている一文字。
その傍で本を呼んでいる本郷。

「・・・・・・・マッサージ・・・・・・・・?」

だった。

「よう、どうかしたのか?」
寝そべったまま、滝が片手を挙げる。
「帰ってたのか?だったら入ってくれば良かったのにな」
指圧を一旦放し、呆れたように一文字が言う。
「みんな何かしてたんじゃないのか?」
本郷は読んでいた本から目を離した。
「えーと、滝さん?」
「何だよ」
「何で一文字先輩にマッサージしてもらっていたんですか?」
乗り込んだ面子の中で一番上になる風見が、代表して滝に問いかけた。
「こいつがさー、最近肩とかこって痛いんだっていうから見よう見まねでマッサージしてやったんだよ」
「マッサージで痛いのは最初のうちだけだ。そのうち痛みを感じなくなる」
その言葉を聞きリビングに乗り込んだ面々は、ヘナヘナとその場に座り込んだ。

・・・俺ら、何勘違いしてたんだろう・・・(泣)

よく考えれば、真昼間からやるはずがない。やるんだったら別の所でやるだろう。
今回は、後輩ライダー達の激しい勘違いだった。


「どーしたんだよ?」


滝の言葉に、彼らはただ、苦笑するしかなかった。



END



アホです(私が)。
肩こりがヒドイので、友達の肩を揉んでもらっていたらこんなネタを思いつきました。
勘違いをして慌てる風見さん他後輩ライダー達は書いてて面白かったです。