Under mistletoe.




 クリスマスの一週間前、FBIなどの捜査機関は慌しかった。
 麻薬及び人身売買の問題が浮き彫りになり、捜査機関総出で問題の全面解決に向けた捜査などが行われた。
 仕事の無い、所謂『窓際族』の滝も借り出され、クリスマスの日本への帰国は断念せざる終えなかった。
 捜査や摘発の日々が続き、誰もが事件で神経をすり減らしているため、 キリスト教徒が大半を占めるFBIでも、クリスマスを祝う気など起きなかった、らしい・・・。



「ったく、早く解決すりゃいいのにな・・・」

  一応、本日の『お勤め』は終了した滝は自宅のアパート、では無く、スパイク達のいるハーレムへ向かおうとした。

 ペトレスク神父のいた教会は再び無人の協会となった。 しかし、クリスマスという事でハーレムの住人が改修作業などを行い、クリスマスに使用できる雰囲気になり、 スパイク達の特別ステージとなったわけだ。
 招待された滝は、途中の店で皆で食べられるような飲食物を買っていこう、と考えた矢先、戦友がいた。

「本郷、どうしているんだ?」

「帰ってこないという連絡を受けたんでな」

 本郷は軽く笑った。

「どこに行くんだ?」

「スパイク達のいるハーレムだよ。ちょっと買い物してから良く予定なんだ」

「だったら、俺は荷物持ちか」

「よろしくな」

 店に行くまで、ほとんど無言だった。
 本郷は語ることが少なく、滝は連日の捜査での疲れの為である。
 逢えない時は逢えたらいろいろと話をしたい、と思っていたが、実際あってみると、話さなくても通じてしまうのだ。
 チキンバスケットとブッシュ・ド・ノエルを数個買い、ハーレムへ向かった。




 ほどなくしてハーレムに着くと、二人は子ども達に囲まれた。


「タキさんとホンゴウさんだ!」


 子ども達は嬉しそうに二人にまとわりつく。二人は買ってきた飲食物を彼らに渡し、 スパイクが待っているステージへ向かった。


「本郷」


「ん」

「・・・ありがとな」


 自分の前にいた滝の耳は微かに紅かった。


「ああ」


  照れ屋な彼なりの行動である事を、長年の付き合いから本郷は理解している。

 ふと、教会の飾りに眼をやった本郷は、悪戯っ子のような表情になった。 

「滝、ちょっと」

「何だ?」

  本郷はうまく壁際に滝を誘導し、一瞬の隙をついて、滝に口付けた。




「!!!」


 人目も憚らず口付けをする本郷を殴ってやろうか、滝は考えた。

  しかし、この場で下手に騒ぎを起こす気など毛頭ない。 と、いうよりも、目の前にいる男にその程度の攻撃など通用しない事などわかりきっている。
 幸いな事は、誰も別の事をやっているため、二人の行動を見ていないことだった。



「滝さん顔赤いよー?」


  ステージの準備を終了したスパイクが二人の元にやってきた。


「うるせー!!」


  スパイクらにからかわれ、滝は大人気なく子ども達を追いかけた。




  クリスマス、宿木の下で、口付けを拒む事は出来ない。



END