ずっと一緒にいたい そう思うことは、いけない事なのだろうか? 3.小さなワガママ あいつと出逢った事で、静かな水面に波紋が出来た。 滝和也。 クルクルと表情が変わる、人懐っこい、人を惹き付ける笑顔の持ち主。 一緒にいるだけで、滝の傍にいるだけで良かったのに。 「本郷」 滝にそう呼ばれるのが嬉しかった。 自分を、その双眸にうつしてくれるのが嬉しかった。 けれど。 いつからだろう。 滝を、友人として見れなくなったのは。 滝がおやっさんや隼人たちと話していると、厭な気持ちになる。 俺だけにその声を聞かせてくれ。 俺だけに触れてくれ。 俺だけを、映してくれ。 しかし、一番厭な事は。 「圭ー」 「呼んだか、滝?」 「おう。また、データ持ってきてほしいんだけどよ」 「良いけど・・・今度、昼食おごれよ」 「分かってるよ」 滝が同僚といる事だ。 『葛生圭』という名の男は、俺が滝と知り合う前からの知り合いだった。 彼は滝の同僚だから、滝と一緒にいてもおかしくない。 だが。 彼は、俺が知らない滝を知ってる。 それが、たまらなく、悔しい。 滝の傍にいるのは、俺だけじゃなかったと、思い知らされる。 他の人と話さないでほしいとか。 他の人を映さないでほしいとか。 そんな風に思うことは、わがままな事なのだろうか。 END |
後書き
久々切ない系を書いたと思いました。
自分の思いを自覚したけど、中々告げられない本郷さんと、そんな事はまったく知らない滝さん、分かっているけど面倒なので言わない圭。
色んな意味で地獄の連鎖って感じです。
ここでの圭と滝さんの関係は、単なる友人。だって、圭にはちゃんとした可愛い彼女がいるもん。
あくまでも友情なんですけど・・・男の嫉妬要領は、女の嫉妬要領の五万倍(ジバク君)だもんね。